「茄子」は黒田硫黄の短編漫画集で「アンダルシアの夏」はその中に収録されている短編ひとつです。
もともと私はこの作者のファンだったので、「アンダルシアの夏」が映画化と聞いてマジで?大丈夫?って思いました。だって、この短編漫画集はかなり地味な話ばかりが収録されているんですよね。全ての話でなぜか野菜の「茄子」が出てくる共通点があるんですが、それもまた地味というか意味がわからんというか、いや、私は好きだったんですけどね。一般受けするのかなと心配になったわけです。
舞台はスペインの自転車ロードレース
舞台となっているのはスペインの自転車ロードレース、そのレース中からいきなり話は始まります。作中で時代の説明がない(というか自転車に対して説明がほとんどない)んですが、みんなヘルメットも被ってないし、自転車のデザインも古いので10年以上前なのは確実なのかな?
主人公のペペは、ベルギーのビール会社「パオパオ・ビール」がスポンサーとなっているロードレースチームに所属するアシスト選手で、このレースが行われている日は、なんとぺぺの兄・アンヘルとかつてのぺぺの恋人・カルメンの結婚式が行われているという設定です。故郷近くを通るステージで、複雑な心境のままレースを走っているぺぺなんですが、あるアクシデントがきっかけで、ペペは単独での逃げでそのまま勝ちを狙うことになります。
47分の短いアニメ映画で、原作がけっこう地味だったんでどうなんだろと思っていたんですが、めっちゃ面白いです!最初、画の雰囲気がジブリっぽいなと思ったんですが、もちろんそんな要素はまったくなく、自転車好き以外は完全に置いて行かれるようなマニアックな内容になっています。
雰囲気がジブリっぽいと書きましたが、実はこのアニメの監督・脚本の高坂希太郎さんは、数多くのスタジオジブリ映画の制作に作画監督や原画として参加していた方なんだとか。さらに高坂希太郎さんは、この業界屈指のサイクリストなんだそうで、業界屈指の実力者が自分の好きなものを存分に創った感じがものすごく出ている素晴らしい作品になっています。
ただ、自転車好きすぎたためか、ただたんに時間の問題なのかはわかりませんが、ロードバイクや自転車レースなどの知識についてはまったく作中で説明していないので、そのあたりの知識なしで見るとあまり意味がわからないかもしれない濃い作品ですね。
続編のジャパンカップサイクルロードレースを舞台とした『茄子 スーツケースの渡り鳥』もありますが、こちらもかなり面白いので続けて観てみることをおすすめします。もちろん原作コミックもおすすめです。